イベント速報

2003年11月25日に行われた『XMLマスターDAY 2003』の速報記事です。

『XMLマスターDAY 2003』レポート

2003年11月25日、青山ダイヤモンドホール(エメラルド)にて「XMLマスターDAY 2003」が開催されました。同イベントは、2001年10月より開始されたXML技術者認定制度「XMLマスター」2周年と、そしてXMLマスター取得者6,000名突破を記念して開催されたものです。XMLやWebサービスの分野で活躍される方々にスピーカー、パネラーとしてお越しいただき、熱のこもった講演・ディスカッションが行われました。約300名に及ぶ多数の皆様が来場され、大盛況のうちに終了しました。


◇ ご挨拶 ◇

XML技術者育成推進委員会 会長
慶應義塾大学常任理事 兼 W3C Associate Chairperson 斎藤 信男

斎藤 信男

XML技術者育成推進委員会の斎藤信男会長(慶應義塾大学常任理事兼 W3C Associate Chairperson)のご挨拶で「XMLマスターDAY 2003」はスタートしました。斎藤会長からは、まずXML,Webサービスが今後ますます重要であることを確認し、そしてXMLマスター試験が2004年1月より海外でも受験可能になることに触れ、中国などと連携したアジアでのキーテクノロジーもやはりXMLであり、XMLマスターのグローバル展開により、技術者のスキル向上に一層役立ちたいといった内容でのご挨拶でした。


◇ 特別記念講演 ◇

「電子政府システムの構築における課題と現状 ~XMLへの期待も含めて~」
経済産業省 商務情報政策局 課長補佐 村上 敦亮 氏

村上 敦亮 氏

経済産業省 商務情報政策局の村上敬亮氏(情報政策課 課長補佐)からは、「電子政府システムの構築における課題と現状~XMLへの期待も含めて~」をテーマに、特別記念講演をいただきました。
IT投資が減少傾向にあるにもかかわらず労働生産性の伸びが高いといったアメリカの調査結果があって、これは以前のIT投資の効果の現れではないかといったレポートに触れ、IT投資が実際に有効に働くにはいくつかの要因によってタイムラグが生じるのではないかといった内容から講演が始まりました。そしてIT投資がよりよい結果を生み出すためには、技術的なアプローチからシステムを構築していくよりは、お客様のニーズを捉えた質の高いシステムを構築する必要があり、その手法としてEA(Enterprise Architecture)が重要であり、さらにデータオリエンテッドアプローチをとることが重要であると述べられていました。また電子政府構築計画の中で、原則的に申請書のデータ様式を長期保存や流通性に優れるXMLとするといった内容に触れ、e-Japan関連システムで実際にXMLが使用されているなどの紹介もありました。


◇ 講演 ◇

「XML、Webサービスの普及と標準化を目指して」
XMLコンソーシアム 副会長
日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業部 ソフトウェア・マーケティング
部長 田原 春美 氏

田原 春美 氏

XMLコンソーシアムの副会長の田原春美氏(日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業部 ソフトウェア・マーケティング部長)からは、「XML、Webサービスの普及と標準化を目指して」をテーマに、講演をいただきました。
XMLコンソーシアムの活動と、日本アイ・ビー・エムでのJavaやXML関連の実業務に基づいた講演内容は非常に説得力のあるものです。まずはXML,Webサービスの現状としてXML,Javaはすでに実用レベルであるが、Webサービスはこれからが普及期であると分析し、Webサービスの真の普及への課題として、適用分野を見極めてWebサービスのメリットを訴求していくこと、標準化の促進、XML技術者の増強などを挙げ、最後に「新しい動きと展望」をテーマにして、XMLコンソーシアムでのWebサービスを使用した取り組みや、グリッド技術とWebサービスを融合した日本アイ・ビー・エムでの実装例などの豊富な実例を紹介されました。中でも、Webサービスとグリッド技術を組み合わせることによってWebサービスが活きてくるといった内容は興味深いものでした。


◇ パネルディスカッション ◇

「テクノロジーリーダーが語る
『Webサービスのテクノロジーに死角はないか?』」

◆モデレーター
株式会社アットマーク・アイティ 取締役編集局長 新野 淳一 氏
◆パネラー(50音順)
・サン・マイクロシステムズ株式会社
システム技術統括本部 ITアーキテクト 下道 高志 氏
・日本アイ・ビー・エム株式会社
東京基礎研究所 Webサービスグループリーダ 中村 祐一 氏
・マイクロソフト株式会社
デベロッパーマーケティング本部 Software Architect 萩原 正義 氏

新野 淳一 氏
下道 高志 氏
新野 淳一 氏
下道 高志 氏
中村 祐一 氏
萩原 正義 氏
中村 祐一 氏 
萩原 正義 氏

「XMLマスターDAY 2003」後半のパネルディスカッションでは、(株)アットマークアイティの新野淳一氏(取締役編集局長)をモデレータとし、サン・マイクロシステムズ(株)の下道高志氏(システム技術統括本部 ITアーキテクト)、日本アイ・ビー・エム(株)の中村祐一氏(東京基礎研究所 Webサービスグループリーダ)、マイクロソフト(株)の萩原正義氏(デベロッパーマーケティング本部 Software Architect)をパネラーに迎え、「テクノロジーリーダーが語る『Webサービスのテクノロジーに死角はないか?』」と題してディスカッションが行われました。

1.WebサービスはCORBA、DCOMの弱点を克服できているか

  • CORBA,DCOMなどと比べてSOAPは扱いやすいといえるが、まだまだ浸透はしていない感じ。
  • SOAPとCORBA,DCOM,RMIとは同一には比べられない。
  • Webサービスはサービスが自立的である点が特徴(疎結合)と言えるが、実用的にはさまざまなインプリがまだ足りない段階。
  • 異なるプラットフォーム、レガシーシステムの連携には疎結合が有効。
  • 広く浸透していくには技術だけでなくマインド的な、Webサービスの可能性に対する啓蒙が必要なのでは。

2.標準仕様と実装のジレンマ

  • 一般的に標準には時間がかかるもの。
  • 実際、仕様が複雑になってきている。
  • 実際にビジネスアプリケーションを作成するための標準としては、大枠としてはそろってきたともいえるが、ドラフト段階のものもあり、まだ十分とはいえない。
  • さらにその先にはメッセージウェアハウスなどのテクノロジーもあり、エンドユーザーとしてはテクノロジーを気にしすぎるよりは、その上の上流を意識するべき。

3.Webサービスのテクノロジのうち、何を学ぶべきなのか

  • ツールは生産性を高めるものであるが、ツールは万能ではない。
  • お客様の視点にたったアプリケーションが重要であり、それはツールでできることではない。
  • 自分でコーディングする努力は惜しまない。
  • いろいろな意味で広い視野を持って。

4.最後によいエンジニアのために

  • フェデレーション(連携)がキーワード。
  • 多くのスキーマを読む、勉強する、動かす。
  • XMLに関する得意な分野で何らかのオープンプロジェクトに参加をし、ディスカッションする。
  • XML以外の技術を知り、XMLの利点・欠点を知る。
  • 仕様・本を読むことそのものは勉強ではない、ぜひ自分で考えましょう。

この速報記事ですべてをお伝えすることはできませんが、まさに現場で活躍されているパネラーの皆様の声は大変貴重で、来場者の皆様からはまだまだ聞き足りないといった様子もうかがえる、大変興味深いディスカッションでした。


◇ 表彰式 及び 閉会の辞 ◇

最後にXML技術者の普及に貢献した企業として、XMLマスター取得者1,000名を達成された(株)日立システムアンドサービスがXML技術者育成推進委員会より表彰されたほか、XMLマスター取得者の中から、記念すべきXMLマスター:プロフェッショナル取得者第1号として、NECの吉田享之氏(インターネットソフトウェア事業部)が、また取得者第6,000号として、東芝インフォメーションシステムズ(株)の中村義文氏(セミコンシステム事業部)が表彰されました。おめでとうございます。

日立システムアンドサービス
XMLマスター取得者1,000名の育成
(株)日立システムアンドサービス
吉田 享之 氏
「XMLマスター:プロフェッショナル」
第1号取得者

NEC
インターネットソフトウェア事業本部
吉田 享之 氏
中村 義文 氏
「XMLマスター」 第6,000号取得者
東芝インフォメーションシステムズ(株)
セミコンシステム事業本部
中村 義文 氏

◇ イベントを終えて ◇

「XMLマスターDAY 2003」は、このように大盛況のうちに終了しました。2004年からは世界121カ国での受験も可能となり、次回のXMLマスターDAYは、よりグローバルなものとなりそうです。今日の講演やディスカッションの中でも、海外に負けず日本からも標準策定やプロジェクトにどんどん参加し、活発に意見を出してほしいといったメッセージが強く印象に残りました。


◇ XMLマスターDAYアンケートより(抜粋) ◇

  • XMLの技術について今後の課題や展開を聞けた事が非常に良かったと思います。またベンダー企業がかかえる問題と私たちSEがどのようにWebサービスに取り組んでいくべきか考える必要があると思いました。
  • すでにXML技術は根を下ろし、有効なものであるという認識を新たにしました。Webサービスに関する技術を身につける意欲を高めるために貴セミナーに参加を決意しましたが、目的は達成されたと思います。貴重なセッションの提供を感謝します。
  • 幅広いXMLの有用性に期待を持っており、顧客提案に積極的に取り入れていきたいと考えております。
  • 現在、まだ資格を持っていないが、資格を取得しようという思いが強くなった。XMLの展望も非常に参考になった。次回も開催されれば是非参加したいと思う。
  • 大変、興味深く感動致しました。
  • 良いセミナーでした。パネルディスカッションも“本音”の部分もたくさん聞けたようで、参考になりました。

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