ODFとOOXMLを改良していくために
1980年代から、オフィス文書の交換フォーマットの標準化は、惨めなばかりの
失敗を繰り返してきた。最近、ODFとOOXMLが現われたことは慶賀すべきことで
ある。どちらも実装が存在している(解説:Open Document
Formatの標準化についてを参照)。
しかし、どちらも決して完璧な仕様ではないことは指摘しておかなければなら
ない。
OOXMLには、BRMで積み残しになった問題点のほかに、デザインの不統一(たと
えば、WordprocessingMLでは属性はnamespace-qualifyされているが、他の部
分ではされていない)などはいくつもある。問題点については、数多くの指摘
がなされているが、ここでは触れない。
ODFは、まったく説明の足りない仕様である。図はほとんどなく、文章はスキー
マにコメントをつけた程度のものに過ぎない。ODFのRELAX NGスキーマは、
RELAX NG DTD Compatibility(OASIS Committee Specification)に違反してい
る(a:defaultValueとID/IDREF)など数多くの問題を抱えている。ODF 1.0は、
普通のプロセスを経ていたら、ISO/IEC規格として承認されないレベルである。
なお、最後の文は、ODFのJIS原案作成委員会で、私以外の委員から出た
発言である。
完璧でなくても、やっと現われた標準である。ODFとOOXMLを改良し、まっとう
なものに育てていく必要がある。そのためには、真っ当なコメントをしなけれ
ばならない。私は、XML 1.0の成立時に大量のコメントをした。それは多少の
貢献だったと自分では思っている。コメントに応えて仕様を改善するという作
業を繰り返さなければ、仕様は決して成熟しない。
その意味で、ODFに問題点はいくらでもあるのにコメントがとても少ないのは不思議
である。ODFに賛成する人たちは、贔屓の引き倒しをしているのではないか。また、
ODF陣営も、コメントに対してもっときちんとした対処をすべきである(私のメール
を参照)。
OOXMLのDIS投票のときのコメントは玉石混交であった。その一部はBRMによっ
て解決された。しかし、まだ問題は残されている。地道な改善を続けていかな
ければならない。
OOXMLのメンテナンスについては、SC34がオスロ会議でさまざまの決定を行って
いる。私がコンビーナを勤めるOOXML Ad-hoc Group 2(これはSC34の中にある)は、
OOXMLの欠陥に関するコメントを各国および一般から集めるためのWebフォーム
を準備している。これをいつ公開できるかは、アピールの行方によって左右さ
れるが、できるだけ早く公開したいと考えている。
投稿者: 村田 真 日時: 2008.06.16 | パーマリンク | コメント (0) | トラックバック (0)