村田真のXMLブログ
日本人で唯一W3CのXMLワーキンググループに参加しXMLの標準化プロセスに携わったXMLの生みの親、村田真さんのブログです。
Microsoft Office 2010におけるOOXMLの拡張
Microsoft Office 2010で、ISO/IEC 29500をどのように拡張したかが公表された。
- [MS-DOCX]: Word Extensions to the Office Open XML File Format
- [MS-XLSX]: Excel Extensions to the Office Open XML File Format
- [MS-PPTX]: PowerPoint Extensions to the Office Open XML File Format
- [MS-ODRAWXML]: Office Drawing Extensions to Office Open XML
ISO/IEC 29500は、Part 3(Markup Compatibility and Extensions)の機能によって、拡張が許されて
いる。拡張しても適合するし、古い実装を壊すこともない(ただし古い実装がPart 3をきちんと
処理していればの話)。したがって、これらの拡張はISO/IEC 29500に違反しているわけで
はない。
これらの仕様書からXSDスキーマを抜き出し、要素数をカウントしてみた。全部で363要素
ある。これを、ISO/IEC 29500にあるレベルでまじめに記述すると、1000ページぐらいに
なるのではないかと思う。
さて、これらの拡張をSC34/WG4が規格化し(もちろん各国のコメントによって変更
した上で)、ISO/IEC 29500の一部とすべきだろうか?それとも、マイクロソフトの
独自拡張のままにとどめておくべきだろうか?
独自拡張であってもISO/IEC 29500には適合することは前述した。標準化してもOffice 2010
ではなく、その次の版での対処になるだろう。それに、Office 2010は市場から消えないから、
この独自拡張も消えはしないだろう(Ecma 1st edition OOXMLが消えないのと同じ)。
独自拡張は、今後の版のMS Officeでもおそらく導入される。独自拡張をSC34で標準化
しない場合は、ISO/IEC 29500だけを見ても実際として使い物にならず、マイクロソフト独自仕様
に頼らないと実装できないということになるだろう。標準化する場合には、マイクロソフトの
計画によってISO/IEC 29500の拡張は左右されるということに結局なる。
SC34の幹事国にして、WG4のコンビーナ(私)を出している日本の責任は重い。この
件についてはSC34専門委員会だけで決めるのではなく、技術委員会の意見も聞いた
うえで日本としての方針を打ち出すことになるだろう。
1) 全体
363要素
2) Excelの拡張
125要素
EEDrawingmlSlicer.xsd:2
EEExcelMain.xsd:3
EESpreadSheetMain.xsd:120
EEac.xsd:0
3) Wordの拡張
57要素
WE.xsd:57
4) PowerPointの拡張
40要素
PEAudioVideo.xsd:6
PEMain.xsd:34
5)Office Drawingの拡張
141要素
ODEArtDiagram.xsd:2
ODEDrawingChart.xsd:12
ODEDrawingDiagram.xsd:18
ODEDrawingMain.xsd:52
ODEInkMain.xsd:4
ODEPicture14.xsd:2
ODEWordm.xsd:6
ODEWordprocessingCanvas.xsd:10
ODEWordprocessingDrawing.xsd:6
ODEWordprocessingGroup.xsd:11
ODEWordwordprocessingShape.xsd:11
ODEXlSpreadsheetDrawing.xsd:7
投稿者: 村田 真 / 日時: 2009.09.26
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